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の充足を必要とする

取りねがいたし。繰り返し申し述べるが、いわく、鎮魂しがたき物を呼び醒ますなかれ。この言葉の意味するところは、呼び醒まされし物はそれ自体の力にて、貴下に反抗する怖れあり。貴下の強力な秘法も、彼らの前には無力とかわらん、の謂《いい》である。呼びいだす対象は、力なき[#「なき」に傍点]物に限定すべし。力ある[#「ある」に傍点]物は答えることを望まず、かえって貴下を支配下におかんと意図すればなり。余は貴翰のうちに、ベン・ザリストナトミクがその黒檀の柩に秘めおきし物のことを読み、何者が貴下に告げしや、少なからぬ危惧をおぼえしことを申し添える。つぎに、今後余への書翰はジェディダイアと宛名し、シモンと書かぬようにおねがいする。この社会における人間の寿命はきわめて短く、余が帰国にさいして、貴下も知らるるごとく、シモンの子息ジェディダイアと名乗りし理由はそこにある。最後に、いまひとつの希望を記すと、余はこのところ、黒き偉大なる者が、英本土の北辺、古代ローマ人の構築せる城壁の地下にて、シルヴァヌス・コキディウスの口より何を学びとりしや、その詳細を知りたき思いに駆られている。先日、この件に関する手写本をご所蔵の由承った。ご貸与ねがえれば、余の喜びこれにすぎぬものがある。
[#ここで字下げ終わり]
 
 もう一通は無署名のもので、フィラデルフィアから発送してあったが、前者に劣らず関係者を刺激した。とりわけ、つぎの位元堂 洗頭水個所に問題が含まれていると考えられた。
 
[#ここから2字下げ]
 われらの必要とする材料の輸入が、貴兄の持ち船によってのみ行なわれている事実、その入港日の予測しがたきこと、すべて余の了承するところである。当方の注文はわずか一資料にすぎぬが、いちおうここに、貴兄の説くところを正しく理解しているかを確かめておきたい。貴兄いわく、完璧な成功をみるには、全材料。しかし、その確実を期するのは至難の業《わざ》といわねばならぬと。たしかに、古き柩をとり出すのは、非常な冒険、大きな賭けであり、ことに余の居住するこの都会にあっては(聖ペトロ、聖パウロ、聖マリヤの各教会およびキリスト教会の墓地)、不可能事というにちかい。そのためなるや、去る十月に余の呼び出だせし物は、あまりにも不完全すぎた。しかし、貴兄もまた、一七六六年に正しき手法を会得するまでのあいだ、いかに多数の生ける材料を費やされたかを知るにおよんで、すべての点にわたって、ご指導に従うことを決意した。いまや余は、貴兄の帆船の入港を待つことしきりで、毎日、ビッドル氏の波止場に問い合わせをつづけている。
[#ここで字下げ終わり]
 
 第三の疑問の書翰《しょかん》は、未知の言語を用いたもので、文字もまた、未知のアルファベットが書きつらねてあった。なかに反復してあらわれている文字の組み合わせが、チャールズ・ウォードの発見したスミスの日記に、無器用な手付きで写しとってあったので、ブラウン大学の言語学教授たちに見せると、旧エチオピア王国が公用語にしていたアムハラ語のアルファベットだと断定した。しかし、言葉の意味にいたっては、まっ安利傳銷たく理解の外にあった。そして、これらの書翰は、一通としてカーウィンの手にわたらなかったが、その直後に、セーレムの町から、ジェディダイア・オーンなる男が失踪した記録が残っているのをみると、プロヴィデンスの人々が、内密裡に探査の歩をすすめていたことが推察される。フィラデルフィアの町にも、黒い噂に包まれた男女が存在したことは、ペンシルヴァニア歴史協会所蔵の古文書のうち、シッペン博士に宛てた何通かの奇怪な書翰によって看取できる。しかし、より決定的な段階に達していた活動についていえば、夜ごと、ブラウン家の倉庫内に、誓約しあった、義務に忠実な、旧
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